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  • 執筆者の写真栗原誠

住宅ローン控除の見直し

町田市の税理士くりはらです。


令和4年度の税制改正は昨年秋の衆議院選挙を控えていたこともあり改正点は少なめでした。私からみて重要性の高いものを確認していきたいと思います。


 住宅ローン控除関連の見直し 


細かい改正内容はもっとたくさんありますが、令和4年度の主な改正点を挙げます。

①控除率:0.7%に引き下げ(改正前:1%)

②控除期間:新築住宅は13年(令和6~7年入居の一般住宅は10年)、既存住宅は10年

③所得要件:合計所得金額2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)

④床面積要件:令和5年以前の新築住宅について、合計所得金額1,000万円以下なら下限40㎡に緩和(原則:下限50㎡)

⑤適用対象外住宅:令和6年以後の新築住宅のうち省エネ基準に適合しないものは適用対象外

⑥住民税からの控除:所得税から控除した残額は総所得金額等の5%相当額、最高9.75万円(改正前:7%、最高13.75万円)に減額

⑦借入金の残高証明書:特別控除申告書への添付不要


 見直しの考察 


①の控除率が下がったのは、昨今の低金利で住宅ローン利息支払より住宅ローン控除額の方が上回る(儲かる)割合が高いという会計検査院の報告からです。また住宅ローンを組む必要がない人が住宅ローンを組んだりという動機付けになり本来の制度趣旨(金利負担の軽減)からずれてしまっていることを問題視したようです。


②は既存住宅や一般住宅と省エネ住宅等とで差をつけているのは自動車税と同じ感覚です。

なお、一般住宅<省エネ住宅<ZEH(ゼッチ)住宅<認定住宅の順で住宅性能が高いです。


③は所得が高い時には適用は必要ないでしょうと。適用を受けようとする年は毎年所得要件の判定が必要になります。合計所得金額は損益通算「後」、総合課税の特別控除「後」、分離課税の特別控除「前」、各種繰越控除「前」となりますので注意です。

なお、「住宅ローンを使わないで」認定住宅等を新築した場合には特別控除が別途用意されています。


④ですが、これは逆に比較的小さな住宅にも所得制限付きで適用範囲を拡充したというところです。


⑤は2050年カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量の実質ゼロ)の実現に向けた一環ですね。令和6年以後は新築の一般住宅は建築確認自体がもう下りなくなるようです。


⑥も住宅ローン控除縮小傾向の影響と考えられます。


⑦は銀行が直接税務署に借入金額の調書を提出するので添付不要となっていきます。生命保険料の控除証明書も順次マイナポータルで連携可能となってきています。

※マイナポータル連携控除証明書等発行主体一覧:

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm


 おわりに 


私自身は住宅ローン控除の適用は終わっています(まだまだローンはあります)が、控除を受けられた期間はかなり税負担が軽減された印象です。①の逆ザヤみたいなことは明らかに本来の制度趣旨から外れていますので、個人的には良い改正だと思います。(影響ないからそう言えるのかもしれませんが)

ただ、適正な納税意識を持つためにも、税金制度には課税の公平性を保っていてほしいです。






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