町田市の税理士くりはらです。
令和4年度の税制改正は昨年秋の衆議院選挙を控えていたこともあり改正点は少なめでした。私からみて重要性の高いものを確認していきたいと思います。
賃上げ促進税制の改正
賃上げ促進税制は
大企業向けには、人材確保等促進税制
中小企業向けには、所得拡大促進税制があります。
基本的には中小企業向けである所得拡大促進税制がほとんどなのでこちらを確認します。
①適用要件:雇用者給与等支給額が前期比1.5%以上増加(改正なし)
※継続雇用者要件は令和3年度改正で撤廃済み
②税額控除率:(基本)支給増加額の15%(改正なし)
③上乗せ措置:イ、支給額が前期比2.5%以上増加なら②に15%上乗せ
ロ、教育訓練費が前期比10%以上増加なら②に10%上乗せ
※基本と上乗せ措置を合わせ最大40%(改正前:最大25%)
※令和4年4月1日以後開始事業年度から適用
④税額控除限度額:当期の法人税額の20%相当額(改正なし)
改正の考察
税額控除率の上乗せ措置が令和4年度の主な改正点で、基本と上乗せ措置の合計割合が最大40%となりました。
注意点は、税額控除限度額は法人税額の20%相当額のままで改正はないということです。
例えば、要件をすべて満たす会社で、支給額が100万円増加し、法人税額が200万円
の場合で考えます。
①増加額100万円×40%=40万円 ※改正前なら100万円×25%=25万円
②法人税200万円×20%=40万円
③①=③で40万円 ※改正前なら①<③で25万円
この会社は改正により控除される金額が15万円増加します。
次に、要件をすべて満たす会社で、支給額が1,000万円増加し、法人税額が500万円
の場合で考えます。
①増加額1,000万円×40%=400万円 ※改正前なら1,000万円×25%=250万円
②法人税500万円×20%=100万円
③①>③で100万円 ※改正前なら①>③で100万円
この会社は改正でも控除される金額は変わりません。
後者の場合、やみくもに支給額を増加させたり教育訓練費を増加しても控除額は変わりません。支給額の増加や教育訓練自体はもちろん大事ですが、ただ税額を減らしたいがために増額させるのは本末転倒です。
会社の状況により影響は違ってくるので試算をしておき、納税予測と合わせて計画的に適用を準備してください。
たとえ適用要件をすべて満たしていても、そもそも法人税額自体が発生しなければ控除することが出来ません。
おわりに
あと少し給与で還元していれば税額控除ができたのにというのが最も悔やまれます。会社なら税理士が顧問関与していることがほとんどですので大丈夫だとは思いますが、年一で資料をまとめて渡してよろしく、としていると危ないです。最低でも決算前に一度は優遇税制等の適用が考えられないかの検討が必要かと思います。
Comments