栗原誠
税制改正大綱(令和5年度)
町田市の税理士くりはらです。
税制改正大綱が発表されてからはや1ヶ月。もちろんすぐに目を通しましたが、記事にする余裕がなく(言いわけ)。
ようやく少し落ち着いたので、今さらですが私の主観で大事な部分だけ簡単に触れたいと思います。
税制改正の流れ
毎年、税制改正は行われますが、流れは以下のとおりです。
①8月頃:各種団体が税制改正要望等を提出
②11~12月:与党税制調査会が要望等を審議、取りまとめて税制改正の大綱を閣議提出
③12月:税制改正の大綱を閣議決定
④1~3月:税制改正法案の提出と審議
⑤3月:税制改正法案の可決、成立
⑥4月:税制改正関連法の施行
つまり、③が終わって、いまはちょうど④に入るところですね。
先日、通常国会(常会)が招集され、開会されましたので、これから税制改正法案だけでなく、たくさんの法案が提出され、審議されるところです。
税制改正大綱の目玉?
毎年、大きなものから小さなものまでかなりの数の税制改正大綱があります。
だいたいこの通りで決まることが多いですが、まだ「たたき台」ですし、完全に決まったわけではないので変更となる、または法案自体が成立しない可能性もあります。
実務上あまり関係ないものを除いて、私の主観で大事なものだけ目玉として取り上げさせていただきます。
私の主観では、大きく消費税(インボイス絡み)と贈与税の見直しの2つです。
【消費税(インボイス絡み)】
①インボイス発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
・免税事業者が課税事業者を選択した場合の負担軽減のため、消費税の納税額を売上税額の2割に軽減される激変緩和措置(3年間)。
・申告書にその旨を付記すれば、申告時に選択適用可能。
②中小事業者等に対する事務負担の軽減措置
・基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者は、インボイス制度開始の令和5年10月から6年間、1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除可能。
③少額な返還インボイスの交付義務の見直し
・事務負担軽減のため、1万円未満の少額な値引きは返還インボイスの交付が不要。
※インボイス制度の施行が迫ってきており、当面の混乱を避けたいという意向を感じます。
※事務負担の軽減は歓迎ですが、選択肢が増え、納税者が不利にならないように税理士の慎重な対応も大事ですね。
【贈与税の見直し】
①相続時精算課税制度の見直し
・暦年課税の基礎控除とは別に年間110万円の基礎控除
・相続税の課税価格への加算は、贈与額から基礎控除を控除した残額
・相続税の課税価格への加算は、贈与時の時価から災害による被害部分相当を控除した残額
②暦年課税の生前贈与加算の期間の見直し
・3年から7年に延長
・延長期間の贈与財産の加算は、贈与財産価額合計から総額100万円を控除した残額
※②の3年から延長はずっと言われてきていましたので、ようやく見直されるかというのと①の見直しは大きいですね。生前贈与の選択肢が複雑になった印象です。
おわりに
インボイス制度は経過措置が直前になって出てくることは予想していました。マイナンバーの時もそうですが、最初は大騒ぎして厳格な対応をしようとしますが、時間が経てば、そこまで神経質にやる必要はない、という感じになります。最初は様子見である程度事例が出揃ってきたこれくらいの時に対応した方が無駄がないのかなと思います。
贈与税は大きく制度が変わるので、「生前対策」に大きく影響が出そうです。
毎年税制が変わるので頭の更新が大変ですけど、ある意味、飽きないのでいいですね。
